n8nとは?ノーコードで業務自動化とAI連携を始める方法

目次

はじめに

多くの企業では、担当者ごとに業務ノウハウが属人化していたり、人材不足によって日常業務の効率化が進まなかったりする課題を抱えています。特に中小企業では、限られた人員で複数の業務を兼任することが多く、デジタル化や自動化を進めたいと思っても、どこから手をつけて良いのか分からないという声も少なくありません。

こうした背景から、専門知識がなくても使えるノーコード自動化ツールが注目されています。中でも「n8n(エヌエイトエヌ)」は、無料で利用できるオープンソース型の自動化プラットフォームとして人気を集めています。 データを自社で管理でき、AIとも柔軟に連携できる点が大きな特徴です。

この記事では、n8nの基本的な仕組みから始め方、料金体系、他ツールとの違い、そして開発事例までを網羅的に解説します。

n8nとは?何ができるのか

n8n(エヌエイトエヌ)は「nodemation(ノード+オートメーション)」の略称です。 2019年にドイツで開発され、今では世界50万人以上が利用しています。 視覚的なフローエディタで「トリガー(Trigger)」と「ノード(Node)」を組み合わせて、業務自動化を設計します。

トリガー処理の起点。
【例】:Gmailで新着メールを受信した時、カレンダーに予定が追加された時など。
ノード実行タスク。
【例】:スプレッドシートへ書き込み、Slackに通知、ChatGPTに要約依頼など。
ワークフロートリガーとノードをつなげた自動化の流れ。ドラッグ&ドロップで構築可能。

例えば「Googleドライブに請求書がアップロードされたら(トリガー)、内容をAIで読み取り(ノード)、Googleドキュメントに保存し(ノード)、Slackに通知する(ノード)」という一連の処理を、n8n上でブロックをつなぐ感覚で構築できます。プログラミングの代わりに視覚的UIで設定するため、レゴブロックを組むように業務フローを自動化できるのが特徴です。また、n8nは、700以上のアプリケーションと連携でき、AIモデル(Gemini、ChatGPT、Claudeなど)との連携も簡単にできます。

始め方:クラウド版とセルフホスティング版

n8nには大きく分けて、クラウド版とセルフホスティング版(オープンソース)の2つの利用方法があります。

クラウド版は手軽に試せる一方、セルフホスティング版はセキュリティとコストパフォーマンスに優れています。 社外データを扱わない個人利用にはクラウド版、社内データ連携やランニングコストを抑えたい場合にはセルフホスティング版がおすすめです。

項目クラウド版(n8n Cloud)セルフホスティング版
概要公式が提供するクラウド環境。アカウント登録だけですぐ利用可能。自社サーバーやクラウド(AWS、GCPなど)にn8nを構築して運用。
導入難易度低い:インストール不要で即利用可能。中〜高:Dockerなどの環境構築が必要。
セキュリティ/データ管理n8n社がホスティング。データはクラウド側で管理。自社でデータを完全管理可能。機密性の高い業務に向く。
アップデート・保守自動更新でメンテナンス不要。手動でバージョン管理が必要。
クラウド版の最新機能が使用できない場合が有る。
費用月額€20〜(無料トライアルあり)。無料(サーバー費用のみ、月1,000円前後)。
安定性・運用負荷高い。公式インフラ上で安定稼働。環境設定により左右されるが、長期運用コストは低い。
バックアップ自動バックアップ機能あり。自社で設定・管理が必要。
おすすめユーザー層ノーコード初心者、試験導入、メンテナンスの手間を削減したい、最新機能を使いたい。エンジニア、情報管理部門、社内運用を重視する法人。

クラウド版の場合の始め方

1. n8nのログイン画面にアクセスする。

2. アカウント情報を入力する。

3. 設問に4問答える。

4. 一緒に開発をするメンバーがいる場合、メンバーのメールアドレスを入力して招待メールを送付する。個人開発の場合は「Skip」を選択する。

5. ワークスペースが出来上がるまでしばらく待つ。

6. 出来上がったら「Start automating」を押す

7. 以下の画面になったらクラウド版のワークスペースが正しく出来上がっています。

料金体系と導入コスト感(2025年版)

n8nはクラウド版とセルフホスティング版の両方を提供しています。 2025年時点の料金プランは以下の通りで、すべてのプランに「無制限のワークフロー作成」と「主要アプリ連携機能」が含まれています。

プラン月額料金(年契約)実行回数/月主な特徴
Starter20€(約3,300円)2,500回
  • n8nクラウドホスティング
  • 1つの共有プロジェクト
  • 5つの同時実行
  • 無制限ユーザー
  • フォーラムサポート
  • 50 AI Workflow Builder クレジット
Pro50€(約8,250円)〜10,000回〜(50Kまで拡張可)

  • Starterの全機能に加え:

  • 3つの共有プロジェクト

  • 20の同時実行

  • 7日間の分析履歴

  • 150 AI Workflow Builder クレジット

  • グローバル変数・履歴・検索機能

  • 管理者ロール機能

Business667€(約11万円)〜40,000回〜(最大200Kまで拡張可)
  • Proの全機能に加え:
  • 6つの共有プロジェクト
  • SSO / SAML / LDAP対応
  • 30日間の分析履歴
  • バージョン管理(Git統合)
  • スケーリングオプション
  • セルフホスティング対応
Enterpriseカスタム見積もり無制限(要相談)

  • Businessの全機能+以下を含む

  • 無制限プロジェクト・200+同時実行

  • 365日分の分析履歴

  • 外部セキュリティ統合(SIEMなど)

  • ログストリーミング・SLAサポート

  • 専用サポートと請求書払い対応

セルフホスティング無料(VPS費用のみ・月1,000円前後)無制限
  • オープンソース版を自社サーバーで運用
  • データ完全管理・APIカスタマイズ可能
  • Docker・GitHub経由でインストール
  • 技術的な自由度が最も高い

※上記の料金はn8nのプラン利用料です。 ワークフロー内で使用する外部サービス(例:OpenAI API・Gemini API・外部DBなど)には、それぞれのサービス提供元によるAPI利用料・データベース利用料が別途発生します。 特にAIを利用する場合は従量課金制のケースが多いため、利用頻度に応じたコスト設計が必要です。

用途別おすすめプラン比較

AI連携やデータ統合など、用途が明確な場合は「Proプラン」または「セルフホスティング版」から始めるのが最もコスパが高く、拡張もしやすい選択です。

用途・ユーザータイプおすすめプラン理由・活用ポイント
個人・ノーコード初心者Starter手軽にn8nを体験できるエントリープラン。無料トライアルありで導入リスクが低い。
少人数チーム・フリーランスPro複数プロジェクトの管理や、AI連携・履歴分析を活用した運用に最適。
中規模企業(50〜100名未満)BusinessSSO対応・Gitバージョン管理によりチーム運用を強化。社内自動化の中核に向く。
大企業・情報システム部門Enterprise厳格なセキュリティ要件に対応し、監査・ログ・SLA保証を重視した環境を構築可能。
技術者・開発者・自社運用志向セルフホスティングサーバー構築の知識があれば最もコスト効率が高く、自社でセキュリティを担保可能。

他ツールとの違い(Make/Zapier/Dify)

ノーコード自動化ツールには多くの選択肢があります。 代表的なものに Zapier(米国発の老舗ツール)、Make(旧Integromat)、 そしてDify(AIアプリ開発特化型)などがあります。 ここでは、それぞれの特徴を比較しながら、どのツールがどんなニーズに合うのかを整理します。

項目n8nZapierMakeDify
主な用途汎用的な業務自動化・AI連携・データ連携シンプルな自動処理やマーケティング業務視覚的な多段処理・シナリオ構築生成AIアプリ開発・AIワークフロー構築
セルフホスティング対応◎(Docker / VPS / On-prem対応)×(クラウド提供のみ)△(限定的、外部API連携中心)◎(オープンソース、自己ホスト可能)
AI連携◎ ChatGPT / Gemini / Claudeなど◯ 主にOpenAI API対応◯ OpenAI・Gemini連携ノードあり◎ LLM中心(OpenAI, Claude, Gemini対応)
公式対応サービス数◯1,000以上
(REST APIを自分で設定すれば実質無制限)
◎7,000以上
(公式対応数が最も多い)
◯3,000以上×AI関連を中心に数百~数千
料金体系(最小プラン)◎無料(セルフホスト版)〜△$19.99〜(約3,000円)△$9〜(約1,400円)◎無料(セルフホスト版)〜
利用制限◎クラウド版は上限有り
セルフホスト版は無制限
△上限あり△上限あり◎クラウド版は上限有り
セルフホスト版は無制限)
セキュリティ・データ管理◎セルフホストで完全自社管理可能△クラウド上でZapier側が管理△クラウド中心、API経由で制御可能◎セルフホストで完全自社管理可能
拡張性・開発者向け機能◎高い(独自ノード開発・JSスクリプト対応)△限定的(コード拡張は不可)◯中程度(モジュール開発あり)◯中程度(AIパイプライン・API統合可)
操作性・UI中級者向け(技術寄りだが自由度高い)初心者向け(直感的な設定)初心者向け(直感的な設定)開発者寄り(AIブロック構成UI)
コミュニティ・情報量◯活発(特に欧米で活発。GitHub・フォーラム・日本語対応あり)◎非常に多い(英語中心)◯多い(公式チュートリアル豊富)△新興(AIエンジニア中心に拡大中)

n8nは「ノーコードでありながら高度な制御ができる」点が強みですが、 AIアプリ開発を目的とする場合はDify、マーケティング業務中心ならZapierが向いています。

特に最近では、DifyやLangflowなどAI系ツールもセルフホスティングを提供しており、 「データを社内に閉じた環境で安全に扱いたい」というニーズには複数の選択肢があります。 その中でもn8nは、AI連携+業務自動化+外部API接続を1つの環境で統合できる点で、 他のツールにはない柔軟性を発揮します。

n8nがおすすめの理由

数あるノーコード自動化ツールの中でも、n8nは「柔軟性」「コスト」「AI連携」「セキュリティ」「拡張性」の5点で高く評価されています。 ここでは、n8nが特におすすめできる理由を整理して紹介します。

1. 柔軟性とカスタマイズ性が高い

n8nはオープンソースで提供されており、セルフホスティングによって自由に環境を構築できます。 ワークフローの細かな制御、カスタムノードの追加、JavaScriptによる独自処理などが可能で、 ZapierやMakeでは難しい“高度な自動化設計”を実現できます。

2. AIとの連携が容易

ChatGPT、Google Gemini、Anthropic Claudeなど主要な生成AIモデルとの統合が可能です。 HTTPノードを使うだけでAPI連携ができるため、たとえば「メールを受信→AIで要約→Slackに通知」など、 AIを組み込んだワークフローを簡単に構築できます。

  • ChatGPTやGeminiを利用した自動返信・文章生成
  • AIによるデータ要約や分類タスクの自動化
  • レポートや議事録生成の自動ワークフロー構築

3. データを自社で完全管理できる

クラウドサービスにデータを預けるのが不安な場合、n8nはセルフホスティングに対応している点が大きな魅力です。 自社サーバー・VPS上に構築すれば、業務データ・顧客情報・AI出力内容などをすべて社内で保持できます。 特に個人情報や機密データを扱う業界(医療・金融・製造など)では強力な選択肢になります。

4. コストパフォーマンスに優れる

他社の自動化ツール(ZapierやMakeなど)は、実行回数や接続数に応じて料金が上がるケースが多い一方、 n8nは月額20€から無制限のワークフローを構築でき、セルフホストすればほぼ無料で運用可能です。 AI APIなどの外部コストを抑えつつ、本格的な自動化を実現できる点が、個人・企業問わず支持されています。

5. 拡張性とコミュニティの充実

n8nは世界中の開発者コミュニティに支えられており、毎月のように新しいノードやテンプレートが追加されています。 GitHubでのアップデートも活発で、AI統合ノードやWebhook対応の改善が続いています。 また、フォーラムでは日本語でも質問できるため、導入後の情報収集・運用ノウハウの共有も容易です。

このように、n8nは「ノーコードでありながらプロフェッショナルな自動化を設計できる」唯一のツールと言えます。 柔軟性・コスト・セキュリティ・AI対応をすべて両立したい方には、最もおすすめできる選択肢です。

実際の開発事例

n8nは、ノーコードで業務フローを自動化できるため、さまざまな業種・職種で導入が進んでいます。 以下では、n8nの設定のノウハウから、実際に開発されたワークフロー事例を紹介します(順次追加予定)。

よくある質問

プログラミング知識は必要ですか?

基本は不要です。視覚的に設定できますが、必要に応じてJavaScriptを使った拡張も可能です。

AIとの連携はどのように行いますか?

AIノードでAPI接続するだけで、ChatGPTやGemini、Claudeなど複数のAIと統合できます。

無料で使えますか?

セルフホスト版は完全無料。クラウド版も14日間の無料トライアルがあります。

n8nで独自のAIエージェントを開発したい場合は?

オリジナルのAIエージェントやAIアプリを開発したいならば、専門サポートを活用するのがおすすめです。

そこで、おすすめしたいのが「ジドウカ」です。

ジドウカは、これまで合計800タスク以上の業務の自動化をしてきた実績のある法人専用の自動化サービスです。

オリジナルでオーダーメイドのAIエージェントを開発したい、技術に詳しくないので不安という方でも「こういう作業をラクにしたい」と伝えるだけで自動化が実現します。

「本当に自社業務にn8nを導入できるか不安…」という方は、短期の「お試し開発」も活用可能です。

まとめ

n8nは、ノーコードで業務自動化とAI連携を自由に設計できる次世代ツールです。 クラウドでもセルフホストでも使える柔軟性を持ち、コスト効率と拡張性の両立を実現します。

AIとノーコードを活用して業務を効率化したい方は、ぜひn8nを試してみてください。 運用支援や技術的フォローが必要な場合は、法人向け自動化支援サービス「ジドウカ」も併せて検討してみましょう。

目次