データドリブン経営の思想基盤を自動化で実現。半同期的な「データ解析・共有」により事業の解像度を上げ、よりシャープな意思決定に活用。

ベジクル株式会社

代表取締役 池田 将義 様

  取締役 岩崎 亘 様

東京都大田区の大田市場の近くで業務用野菜卸事業を行うベジクル株式会社。都内の飲食店をメインターゲットとし、飲食店から夜中注文を受け、自社で市場から野菜の調達し、社内でピッキング、配送まで一気通貫で行っています。自社で比較サイトを開発したり、リスティング広告を回したり、SFAを早い段階で機能させたりと、マーケティングを主軸に新規獲得を得意とした結果、2009年の創業以来、取引飲食店数が累計10,000店舗を突破しました。

野菜は「①安い」「②大きい」「③腐りやすい」と、お世辞にも「流通と相性が良い」とは言えない特性を持つビジネスモデルでどのように利益を最大化するか模索した結果、行き着いた先が「データ活用」だったと言います。

しかし、その一方で「オンプレミスの基幹システム」や「レガシー特有の非構造化データ」が蔓延り、最初から「データ活用」ができる環境だったわけではなく、その道のりは楽ではなかったと言います。

モニタリングすべきKPIや事業変数が多い事業者ほど、「データ活用 × 自動化」の相性は良いと語るベジクル株式会社に、その本意を伺います。

目をつぶって運転するような感覚で、経営する期間が続いていた。

まずは、御社の事業についてお聞かせください。

池田様:弊社は、東京都にある飲食店様をメインターゲットに野菜を配送するビジネスを行っています。野菜は自社で栽培をするのではなく、市場から調達して、お客様の店舗にお届けしております。一日だいたい、800〜1,200店舗様から注文を受け、お届けしています。

私たちの事業は、非常に「事業変数の数が多い」ことが特徴の一つです。

例えば、今日購入してくださったお客様が明日も購入してくださるとは限らないし、今日100円で仕入れたトマトが明日も100円で仕入れられる保証なんてありません。雨が少ない年は、市場自体にもモノが少ない日が続く可能性がありますが、それを見越して、余分に在庫しようとするとすぐに鮮度が落ちてしまいロスとして処分するしかなくなってしまいます。

また弊社のビジネスは、一種サブスクリプションモデルのような側面も持っています。お客様と取引が開始するタイミングは契約書を交わすので容易に把握することができるのですが、お客様が離反したことを把握するのは容易ではありません。それは、契約を解除するという行為が行われるわけではないからです。自然と買われなくなっていき、気づいたら「あのお客様離反していた・・・」という状況になります。

顧客数が増加することはありがたいのですが、それは同時に離反を認知することが難しくなることも意味するのです。利益率も低く、いわゆる薄利多売なため、とても繊細・慎重な判断が必要とされる一方で、スピードが必要とされます。矛盾が多いビジネスなんです。

だからこそ、「攻め」でも「守り」でもデータ活用をすることの重要性が高いのです。

データ活用のために、どのようにして自動化していますか?

岩崎様:弊社はオンプレミスの基幹システムを使っており、毎日の受注データ、商品マスタデータ、顧客マスタデータなどほとんどのデータは基幹システムに格納されています。また外部へAPI連携することができない仕様になっているため、何かデータを活用したことを行いたいと思ったら、オフィスに行き、基幹システムからテキストファイルでデータを吐き出し、それをメールで自分宛てに送り、自分のPCでエクセルでそのデータを開くというフローを行っていました。

そのため、RPA用のPCをオフィス内に設置し、そのPCに基幹システムをインストールしました。

  1. RPAが決まった時間になったら起動。
  2. RPAにより、自動で基幹システムが開かれ、本日分のデータを抽出。
  3. CSVをスプレットシートに転記し、スプレットシート内でデータ加工。
  4. スプレットシートに記載しているGASが起動して、データを蓄積。
  5. スプレットシート内でデータをグラフ化。
  6. グラフとKPIをSlackに自動通知。

といった手順で基本的に自動化しております。

各フローが自動化するまでは、人間によって手動で更新・運用していました。ですが、担当者がデータを更新するのを失念していたり、担当者によって更新の仕方が違っていたりして、正直うまくデータを活用できませんでした。

データ更新をする人は土日も更新しなければならない日があったり、朝起きなければならなかったりしたため、小さなストレスではあるのですが日が続くと、終わりのないマラソンをしているような感覚に陥っていました。

途中でデータ更新してくれてた社員がやめてしまったこともあったのですが、新しい社員を迎え入れても同様の更新業務を0から教えなければならなかったため、「またやめられたら、もう一度同じことをしなければならないのかな」と内心思っていたそうです。

「事業の解像度を上げる自動化」 × 「単純業務の自動化」の2軸で事業推進

具体的な自動化の内容を教えて下さい。

池田様:たくさんの業務を自動化しているので、少しだけピックアップしご説明いたします。

大きく分けて「事業の解像度を上げる自動化」と「単純作業の自動化」の2つを行っています。

事業の解像度を上げる自動化」は主にマネージャー向けに利用しています。

①日次KPIの通知

前述したようにその日の売上や、配送件数、客単価などの主要KPIを基幹システムに見に行くのではなく、スプレットシートにダウンロードしグラフ化してSlackへ通知を行っています。グラフ化する歳には、先週の同曜日と比較されるようにし、売上が下がっているならば何が問題だったのか仮説を立てやすいように設計しています。

数字を整形して、事業変数がどのような推移を示しているのかを人間の代わりに更新しております。

▲日次KPI通知の様子
▲先週同曜日での売上を比較したグラフを通知

②解約率・離反顧客の通知

弊社では、離反の定義を「前月購入履歴があるが、今月は購入履歴がない」としております。そのため、毎月1日が離反顧客数が最大値になり、月末になるにつれて離反顧客が最小化していきます。

ですが、毎日、どの顧客が購入していないかを調べるのはとても骨が折れる作業でした。現在では、その日時点で注文をいただけていないお客様をCSVにして架電し、CRM活動を行っています。またその結果、離反率をグラフ化してSlackに飛ばし、dailyで解約率を可視化しています。

▲その日時点で購入されていないお客様を自動でエクセル化。
▲前月と比較し、購入していないお客様の率を解約率と定義し、その推移をdailyで確認

③MAU・DAU・利益率の日次通知

①の日次売上と似たものなのですが、1日〜今日までの経営状態の結果を毎日Slackに通知しています。今月の累計売上と累計仕入れ額、その差分から粗利額と粗利率を算出しています。また弊社の事業は曜日ごとに売上額に傾向があるため、そこから月末の売上着地金額を予測し、通知しています。

▲その日時点での累計売上などのKPIを自動出力。差分や達成率も確認できる

④お問い合わせのSlack通知

▲HPから問い合わせが来たら、Slackに自動通知され、すぐにリードにコンタクトを取ることができる。

「単純作業の自動化」は主に事務・CSメンバーの業務負荷を軽減するために使っています。

①納品書の自動連携

②Salesforceへのデータインポート

③基幹システムにある顧客マスタのスプレットシートへの転記作業

上記は一例ですが、これらの業務のように、思考は伴わないがルーティンとして発生する業務を自動化しています。

自動化することによって、どのような影響がありましたか?

池田様:私自身も驚いているのですが、データを加工して共有することによって、メンバー同士の議論がよりデータドリブンなものになり、組織全体の底上げにつなげることができました。これまでは事業変数が多いからこそ、勘や経験に頼らざるを得ない部分が大きかったのですが、データが共有さえすれば、各部署の施策に対して、「やりっぱなし」ではなく、期待通りの数字の動きをしているのか、していないならば施策を変えなければならないのではという組織自体が能動的な体質に好転しました。

また、一部の社員からはシンプルに「ラクになった!」という声も上がっています。これはBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)に近い感覚だなと感じております。

業務を自動化することは、その業務を行っていた担当者が辞めたとしても、再び教えなければならないという業務が不必要になるため、そこも大きなメリットかなと思います。

どんな方におすすめしたいですか?

岩崎様:ITに自信がない方にも寄り添ってくれるので、やりたいことがあるけどどうやればよいか分からない方にもおすすめです。また、RPAツールを自社で導入する必要がないので、社内にエンジニアがいない会社様には助かるんじゃないかなと思います。実際、私たちも現在運用されているものは、「こういうことがしたいんだけどなんとかできないかな?」という提案ベースから始まりました。そして、何より低コストで導入したい会社様にはおすすめです。実際私の知り合いもRPAツールを導入しているのですが、実際のところ正直使いこなせていないため、費用対効果が合っていない会社もあるようです。

最近は、人材不足なので業務が増えてくると採用という手段が主流化していますが、

他の自動化サービスの場合には機能が多すぎて何を使えばいいのか、本当にちゃんと使いこなせるのか迷ってしまいますが、そんな心配は一切ありません。一度試しに話をしてみたら、自社の可能性を最大化させられるんじゃないかとワクワクすると思います。

※掲載内容は取材当時のものです。